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 ぼくのプッシュ



小学校の頃、電話に出た弟が、
「おーい。ちょび、電話だぞ。」と私を呼ぶ。
「ばっきゃろ、ばっきゃろ、呼びつけにすんなっ!!」
と言いながら、私が電話に出る。
友達はそのやり取りがおかしかったらしく、
「もしもし」というと、いつも笑っていたものだ。

年子で性別違いの姉弟なので、そんな感じ。
そんな弟が私に心から「お願いします」といった出来事がある。

ある日裏山の斜面から、
きゃう~ん、きゃう~ん
という、切ない犬の声が聞こえてきた。
窓からみると、白い犬が動けずに助けを求めている。

とにかくなんとかしなきゃと家から飛び出し、
近くまで行って救出方法を考えあぐねてしまった。
道のない急な傾斜。
雨が降ると蛇が斜面を流れてくるような場所で、
うっそうと生えた緑の中から、何が出てもおかしくなさげ。
半ズボンで登るにはちょっと勇気がいる。

同じように窓から様子をうかがっていた弟が、
その時家から飛び出してきて、
同じく半ズボンにも関わらず、
おもむろにその斜面を登り始めた。
あれよあれよという間に、クサリをほどいて無事救出。
引っ掻き傷から血が出ている。

なんだか、負けた。。という気になった。
それ以上に、何とかなって安心もした。

自分を助けてくれた人がちゃんと分っているらしく、
その犬は嬉しそうに尻尾を振って、弟のそばから離れない。

弟が突然「この犬、ここに捨てられちゃったんだよ。うちで飼いたい。」と言い出した。
え!?かなり大人じゃんこの犬。。
確かに犬を飼いたいと、小さい頃からずーっと思っていたけど、
やっぱ子犬がいいよなぁ。。。

渋る私を見て、弟は
「餌も、散歩も全部自分がするから。
遊びたいときだけ遊んでいいから。お願い。お願い。」
と頭をペコペコさげた。

救出劇の一部始終を見た上で、
普段からは考えられない愁傷な頼まれ方をしたら、
さすがに反対も続かない。

「プッシュ」という名前をあっという間に付けて、
犬と戯れる弟。なぜプッシュなのか。。その辺は謎だ。
「プッシュ!」「プッシュ!」「わんわん!」
はじめてのうちの犬。
じわーんと、私もなんだか嬉しくなってきた。

するとプッシュ突然走り始めた。
「どこにいくんだよー!!」
2人でひたすら追う。
。。

行き着いた先は、ある一軒家。
「あら、どこいってたのよ、さがしたじゃない。」

その様子を見て色々理解できた。
クサリを自分ではずしたか、放し飼いの散歩だったのか、
とにかく捨てられたのではなく山に踏み込んで、
クサリが絡まって動けなくなっていただけなのだ。

「そこの山で動けなくて鳴いてたので助けました。」
と告げると、そこのおばさんは何度もありがとうと言った。
プッシュの飼い主が良い人だという事も分った。

弟は帰り道ずっと黙っていたけれど、
家に着くとうわーん!と泣き始めた。

わずか数時間のはじめての犬。

そして数年のちに、念願の子犬がやってくる。
弟は先日の結婚式のスピーチの中で、
今までで一番嬉しかったのは、犬を飼ってもらえた事。
だと言っていた。

そんなに嬉しかったって、家族の誰も知らなかったよ。




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00:49 | 思いで絵日記
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