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 下田のおじちゃん




トットット。
夕暮れ時にバイクがやってくる。
下田のおじちゃんはパン屋さんで、お父さんの友達だ。
いつも、玄関から先は上がらない。
いっぱいにパンを詰めた袋をお母さんに渡すと、
トットット。
すぐにバイクが遠ざかる音がする。
半分開けた玄関から見える空はいつもオレンジ色。
甘いパンの匂い。
小さい頃の記憶。

実家で父と昔の話していたら、思いがけなく
下田のおじちゃんの話になった。

父は「本当に良い奴だった」という。

おじちゃんのお兄さんが、悪い人に騙されて、
借金を背負ってしまい、おじちゃんのお店のお金も、
知らない間に返済に使われていたんだって。

まず兄貴を捜せ。と父は言ったらしいけれど、
そのすぐ後に、おじちゃんも誰にも黙っていなくなってしまったって。

「あんな良い奴はあんまりいない」と、父は言う。

トットッット。
パンが一杯に詰まった袋を持って、
オレンジの空をバックに下田のおじちゃんがドアを開ける。

うちはその頃、お店を全部たたんで、
ビルを立てるために随分借金を抱えていたらしい。
大人はいつも忙しそうだった。

ただ単に、余ったパンをくれているのだと、
ずっとそう思っていたのだけれど、

「あんな良い奴はそういない。」

子供がお腹すかせてたらかわいそうだなぁ。
そう思って来てくれてたって、そんな風に思えてならないよ。

今もどこにいるか分らない下田のおじちゃん。

あの時は小さくてお礼もちゃんと言えなかったけれど、
本当にどうもありがとう。

夕暮れのバイクの音。
おじちゃんが届けてくれた幸せの記憶。
思い返すと今も、胸の中が暖かいオレンジ色に染まる。




03:00 | 思いで絵日記
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